Recent Research

人間が限られた条件のなかで、身体を用いて新たな可能性を切り開いていく方途全般に興味があり、そのなかでも特に視覚芸術、パフォーマンス、スポーツ(特にサッカーと格闘技)、そして宗教的事象を関心領域としています。現在は、伝統的に「内面的な」経験とされてきた芸術経験や宗教的経験を、身体的行為による具体的な環境の改編として再記述できるのではないかとの展望に立ち、研究を進めています。

依拠する理論としては、ミシェル・フーコーの権力論や「生存の美学」を巡る議論にはじまり、最近ではJ・ギブソンの生態心理学とR・バーカーの環境心理学、環境存在論の諸理論、G・ベイトソンの生態学的情報論に可能性を見出し、それぞれの後裔たちの研究も含め学んでいます。徹底した観察から始める生態学的アプローチや対象と素手で付き合うことのできる経験科学に可能性を感じ、現代の認知科学や脳神経科学の成果についても、可能な限り参照しています。これらの経験科学に基づく諸理論に依拠にしながら、また自らも実験を組み立てながら、これまで「社会的な力」「権力」として捉えられてきた事柄を、直接あるいは間接的な知覚の対象として再定義すること、そして人が自らの置かれた権力のセッティングのなかで、自らの知覚を頼りに、生きる可能性を切り開く方途について論じることが中・長期的な目標です。

私見では、ナザレのイエスは、権力のセッティングを天才的な仕方で捕え、その改編を具体的に行った代表的な人物です。このようなイエスに対する関心を中心にして、具体的には以下の四つの方向性で研究を進めています。

  1. 福音書に記されたイエスの活動を、身体的行為による環境の改編として再記述し、分析する。
  2. イエスの具体的な身体的行為が、伝達や教義化の過程で抽象的な概念に変容していったプロセスを明らかにする。
  3. イエスの十字架上の死のように、生物個体の自己保存原則に反し自らの命を犠牲にするような利他的行為がいかにして可能になるのかについて、人間以外の生物の生態も参照しつつ考察する。
  4. レンブラント・ファン・レインの絵画(宗教画/集団肖像画)を参照しながら、社会的力のセッティングとはいかにして知覚可能な仕方で再現されうるのかを分析する。

これ以外にも、人間と動物との共進化(co-evolution)への関心から、家畜表象についての調査も少しずつ進めています。また、同時代を生きる人間として共感している、脚本家C・カウフマン、映画監督S・ジョーンズの作品についても分析を続けています。
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